インフラやシステムの運用を対象にした「IT自動化」は、IT部門のタスクだけではなくビジネスにも影響を及ぼす存在になりつつある。それを成功させるには、幾つかの課題を乗り越える必要がある。
企業における「IT自動化」(インフラやシステムの運用を対象にした自動化)は、自動化による効果を見込みやすい領域において、小規模なプロジェクトから始めることが望ましい。そうすることがIT自動化の課題の克服に役立つからだ。インフラの管理やシステム運用において自動化を実装するに当たっては、さまざまな課題に向き合う必要がある。8つの視点で解説する。
IT自動化は総じて大規模な取り組みだ。それは金銭的投資に限ったことではない。企業はハイブリッドクラウド環境を好んで採用するようになっており、その中には、オンプレミスインフラにあるレガシーシステムや、複数のクラウドサービス、大量のデータが含まれる。このような環境では、自動化の実装が技術的に困難になる場合がある。API(アプリケーションプログラミングインタフェース)がない、最新のツールとの互換性がないなどの状況に直面すると、簡単には済まないカスタマイズ作業や、ツールやトレーニングへの多大な投資が必要になる。ワークフローに不備があったり、タスクが複雑になり過ぎたりすると、IT自動化のメリットを得にくくなる問題もある。
AI(人工知能)技術搭載のツールを使用する場合、相互接続するシステム間でデータをやりとりできるように連携させる必要がある。この作業が難しい場合がある。古い自動化ツールはクラウドサービスのAPIに対応していない場合があるため、API管理への投資が別途必要になることがある。
「サービスとしての統合プラットフォーム」(iPaaS:Integrated Platform as a Service)を活用して、クラウドサービスとオンプレミスインフラにあるさまざまなシステムを接続すれば、コーディングやミドルウェアに関わる作業負荷や投資を軽減することができる。
さまざまな企業が「生成AI」のプロジェクトに投資をしているが、その全てが本番稼働に至るわけではない。本番稼働に至るのはその3分の1程度だと想定される。この状況に対して調査会社Forrester Researchのバイスプレジデント兼プリンシパルアナリストであるクレイグ・ルクレア氏は、「重要なのは、適切なユースケースを選ぶことだ」と助言する。どのような制御をAI技術に任せ、どこまでのアクションをエージェントが実行するのかを組み合わせて考える必要があるという。
IT自動化を実装するだけではなく、保守や修正が難しくなる場合がある。その背景には、例えばシステムの要件が変わることや、システム間のインタフェースに不備があること、クラウドサービスやOSの更新が発生したりすることがある。これらを理由にIT自動化システムでエラーが発生し、修正が必要になることがある。特に、自動化を実装してから半年ほど経ったプロジェクトには注意が必要だ。プロジェクトに従事したソフトウェアエンジニアが会社を辞めてしまうことで、適切に保守ができなくなることもある。
自動化によってワークフローを改善すれば、IT担当者が他の意思決定タスクに集中できるようになるとしても、
自動化チームを結成するには、以下のスキルを持つスタッフが必要になる。
これらの職種の人材には、スクリプト(特定のタスクを自動化するための簡易的なプログラム)を作成するスキルを含め、幅広い知識やスキルが求められる。複雑な問題に対処する問題解決能力や、さまざまなITチームやビジネスチームと連携できる適応力やコミュニケーション能力などのソフトスキルも必要だ。セキュリティ分野の知見と、IT業界における十分な経験があるとより望ましい。
企業では、IT自動化とビジネスプロセス自動化が依然として分断している傾向にある。包括的な自動化は、IT分野と非IT分野の両方を網羅するものだ。AI技術を活用した自動化戦略では、システムやワークフローの透明性を高め、これらを一元管理することが求められる。「どのシステムやタスクを自動化すべきかを判断するには、ITとセキュリティ、ビジネス、データ管理、リスク、財務・調達の担当者が参加する職能横断的なチームが必要だ」。調査会社Gartnerのリサーチ担当グループチーフ兼アナリストのフランシス・カラモウジス氏はそう指摘する。
IT自動化によって、IT関連部門やその他の従業員の仕事のやり方が変わることがある。その変化を受け入れてIT自動化のメリットを享受するには、AI技術の利用やタスクの最適化に関連する新しいスキルを従業員が習得できるように支援する体制と、従業員自身の意欲が必要になる。
手動での介入を必要とする複雑なタスクを自動化しようとして困難な状況に陥ってしまうことがある。5種類のRPAツールを導入したものの、それぞれの手法の実装と統合に必要なスキルセットが社内にないという場合もある。
設計上の欠陥を自動化システムに埋め込んでしまうような不備のあるプロセスやワークフローを避けることが重要だ。「1通りの方法で実行され、一貫性のある標準化されたプロセスであればあるほど、自動化は容易になる」とカラモウジス氏は語る。
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