Microsoftは同社の開発ツールに生成AIを導入し、開発工程を自動化するだけではなく、非エンジニアがAIエージェントを開発できるようにしている。この戦略は人間のエンジニアにどのような影響をもたらすのか。
「生成AIで生成AIを作る」――。Microsoftが推し進めるAI(人工知能)技術活用が、開発現場に無視できない影響を与える可能性がある。同社はローコード/ノーコード開発ツール群「Microsoft Power Apps」(以下、Power Apps)に、自然言語のプロンプト(指示)を使ってAIエージェント(AI技術を使ってタスクを自律的に実行するプログラム)を構築できる機能を搭載した。ローコードは最低限のソースコードを記述する開発手法、ノーコードはソースコードを記述しない開発手法だ。Microsoftの戦略は人間のエンジニアにとって脅威になるのか。
調査会社Gartnerのアナリスト、カイル・デイビス氏は「新しいPower Appsは『人間がAIエージェントを効果的に使うためのユーザーインタフェース(UI)』になる」と評価する。Microsoftは合わせてチャットbot型のアシスタント設計ツール「Microsoft Copilot Studio」も投入し、生成AIの活用によって生成AI関連の開発作業の負荷軽減を目指す。
アプリケーションやAIエージェントの開発に生成AIを活用することは、人間のエンジニアにとって脅威になるとの見方がある。開発作業のハードルが下がると、専門的な経験を積んだエンジニアの需要が減る恐れがあるからだ。しかしデイビス氏は、「そうはならない可能性が高い」とみる。
生成AIは、アプリケーションやAIエージェントの開発作業の一部を省力化する。しかし開発作業の大半は引き続き人間が担当し、特に高度な作業は当面はまだ生成AIに任せることは難しいとデイビス氏は説明する。「生成AIを使ってアプリケーションやAIエージェントを作ったとしても、開発後のさまざまな確認や微調整、修正は必ず人間がしなければならない」(同氏)
Microsoftは、同社製品を使ってAIエージェントを構築するツールの提供に加え、他社ツールとの連携も進めている。Gartnerのアナリストであるジェイソン・ウォン氏によると、MicrosoftはAIモデルを他社ツールと連携させるための通信プロトコル「Model Context Protocol」(MCP)を使い、サードパーティー製AIエージェントとの相互運用性を実現しようとしている。その一環としてMicrosoftは2025年5月、AIエージェント間の通信を可能にするプロトコル「Agent2Agent Protocol」(A2A)に準拠した通信の実現に取り組む計画を発表した。A2AはGoogleが開発している。
Power Appsなどを担当するMicrosoftの部門「Power Platform Intelligent Applications」のコーポレートバイスプレジデントを務めるライアン・カニンガム氏は、「デジタル同僚が人間と共に働くことで開発の仕方が進化していく」と述べる。同氏によれば、ソフトウェア開発企業がより効果的なAIエージェントを構築して訓練するにつれて、AIエージェントは徐々に自律性を高め、開発工程の効率化につながる。
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